連載記事
※毎週火曜日に掲載

dot studio一級建築士事務所
テーマ vol.4建築と都市(周辺環境との関係性)
「まちと建物の関係を再編集する」
計画をスタートする時、その建物が建つ場所の性格や人の流れなど周辺環境の条件を意識して計画します。それは店舗インテリア設計でも、古民家リノベーションでも新築の設計でも同様です。
建築は必ずある敷地に建ち、道路に接しています。その周辺は住宅街であったり、商店街であったり、のどかな自然の中であったりと、場所によって性格や人の流れが全く異なります。建物が建つ「敷地」「道路」「まち」の絶対的な都市構造を解釈し直して再編集することで、人の動きやまちの性格づくりに寄与することに興味を持っています。
ここで、3つのプロジェクトをご紹介します。
富山市の中心市街地である総曲輪にある居酒屋「笑色」のインテリア計画です。建物の隙間に、なんとも薄暗く使い難い路地空間がありました。路地側に対してガラスで開いたオープンなつくりとし、お店に入ることができる入り口を設けました。これによって、路地が表通りのように人が通る場所になり、印象が明るく店舗の延長のような場所に大きく変わりました。今では屋外客席としても使える場所になっています。

【笑色】

ただの路地が屋外客席に
次に市民プラザの南側にある居酒屋「六腑」のインテリア計画です。こちらはシンプルにまちとの接続を可能にするカウンターを道路に面して設けています。テイクアウトでの飲食提供を可能としたり、季節によっては外飲みカウンターにもなります。

【六腑】店内の様子が外から見えるだけで、まちに接続され開かれたお店となる
店舗のインテリア計画においても、まちとの接続によって、まち自体に貢献できるようにという意識を常に持つことで、結果としてお店への集客にもつながると感じています。
最後は、花水木通りの住宅・商業が混在したエリアに建つ「住宅」「賃貸住宅」「店舗」「シェアスペース」からなる複合施設「花水木ノ庭」です。試みていることは先の事例と類似し、どのようにまちと接続するかですが、新築であったため、ここでは表通りを自動車スケールのまま敷地内に引き込んだ計画としました。
駐車スペースを道路側に設けると駐車効率は良いのですが、店舗が通りから奥まってしまうことが花水木通りの歩行体験を乏しくしてしまうと感じたため、店舗を道路に面して設け、駐車スペースを建物内に計画しました。すると、車が通行しない時はシェアスペースの延長として、広場のように使うこともできます。

広場では毎週のようにイベントが開催されている

【花水木ノ庭】
「敷地」「道路」「都市」の関係を再編集することで、それぞれの境界を越えた使われ方をこれからも考えていきたいと思います。