とやまオタクことちゃん✖️とやま建設ラボ「富山オタクが富山のケンチクを知りたがる会」(後編)
富山オタクことちゃんと、とやま建設ラボの初コラボイベント「富山オタクが富山のケンチクを知りたがる会」の後編です!ぜひとも前編↓を読んでから後編へ!https://www.kensetsu-labo.com/article/2657
ことちゃん
さて、後編は「富山の日常での一枚」からいきます!種昻さんお願いします!
種昻さん
はい。こちらの写真です。
ことちゃん
これは富山市内、市電通りのお写真ですね?
種昻さん
ここは弊社の事務所から近い富山市堀川小泉町の電停です。この写真は歩道橋の上から撮ったものですが、電車の上を通る歩道橋なので登るのが凄く大変なんです(汗)。
ことちゃん
わざわざ登っていただいてありがとうございます(笑)。
種昻さん
本当はこの歩道橋を登らなくても電停に行けるのですが、この歩道橋はつい登って景色を見たくなる「アフォーダンス」を感じるんです。
ことちゃん
アフォーダンス…ですか??
種昻さん
アフォーダンスは、アメリカ人の心理学者ジェームズ・ギブソンさんが考えた造語で、「空間や物質が許しを発している」という意味を持っています。建築はアフォーダンスの要素がいっぱいありますが、皆さんの日常生活でもアフォードされている場面はいっぱいあると思うんです。
種昻さん
例えば、「あの路地の奥に行きたい」「ここ座ってみると気持ち良いかも」「この家でBBQしたい」などは、その空間にアフォードがあるかないかの差かなと思います。今日は日頃、建築業に携わっていない人が多く来ていただいていますが、明日から街を歩いていて周りの建築のことが気になってしょうがないようにしたいなと思ってココに来ました(笑)。
種昻さん
皆さん、明日から街を歩く際に様々な空間が話しかけてうるさいかもしれません。そうなれば僕と沼くんのような建築オタクの仲間入りです(笑)
ことちゃん
空間が話しかけてくる。凄く面白いですね。もう既に皆さん、種昻さんの術中にハマっているかも!?
さて、次は沼さんの「富山の日常での一枚」をお願いします!
沼さん
僕はこちらです。
ことちゃん
沼さん、これは絶対わかりません(笑)
沼さん
ここは引っ越ししたばかりのdot studio事務所です。引っ越ししたと言っても、同じビルで同じ階の向かいに移っただけですけど(笑)。このビルは、意匠デザインが凄く凝っていて、富山の有名な建築家の青山善嗣さんが設計された建物です。設計されたのは20年程前だと思いますが、青山さんの設計意図を感じることが出来て、なんだか嬉しくなります。
ことちゃん
設計意図を感じる。建物が語りかけてくる感じですか?
沼さん
そうですね。例えば、この空間には「巾木」がありません。
ことちゃん
ハ、ハバキ…ですか?
沼さん
巾木は壁と床の境目に施す建築部材で、掃除機やモップをかける際に壁が衝撃で傷まないように守ったり、床鳴りやたわみを防ぐものです。巾木がないと壁が痛む可能性が高くなって、施工する立場の人からするとこうした設計を嫌がる人が多いかもしれません。この壁は空間に壁を挿入し、壁は壁として、床は床として扱っている意図を感じます。
ことちゃん
そんな感じた方があるんですね。この奥に見える窓は絵画にも見えますね!
沼さん
この窓の奥、実は公園なんです。窓の開口部枠が隠してあって壁と同じ面で揃えて収めてあります。この窓も、景色を切り取る意図を感じて嬉しくなります。他にも沢山ありますが、マニアックな方向に向かっていくのでやめておきます(笑)。
ことちゃん
私が見る富山の建築は、切り取られた景色の緑が豊かだったり、空が広かったりと、凄く素敵だなと感じることが多いです!
沼さん
お施主さんからすると、そこまでこだわらなくても…と思われることもありますね(笑)。種昻さんもそうだと思いますが、建築家的にはこうした目線で日頃から設計していて、周辺環境との調和に並々ならぬこだわりがあります。
ことちゃん
沼さん、ありがとうございます!今後dot studioさんに遊びに行きますね!
ことちゃん
さて、最後のテーマはこちらです。
種昻さんお願いします!
種昻さん
僕が選ぶニッチな一枚はこれです。
種昻さん
この写真は絶対にわからないと思います(笑)。ですが、この本は皆さん読んだことあると思います!
ことちゃん
種昻さん!皆さん、読んだことないですって!(笑)
種昻さん
そうですか(笑)。「木造の詳細」は、ある一軒の住宅の全図面が掲載されている建築本なんです。実はこの住宅、富山市呉羽にありまして、「呉羽の家」として掲載されています。設計は建築設計界の巨匠で異端な建築家、白井晟一(しらい・せいいち)さんが手掛けられました。
種昻さん
ある日、呉羽山を車で行き来していた時に「あれ?この住宅の門、見たことある!」とたまたま発見したんです。昔は正面の木が生い茂っていてあまり外観が見えなかったのですが、最近このイベントのために写真を撮りに行った時は、外観が少し覗けるようになっていました。
ことちゃん
本で見ていた住宅を目の前にすると、嬉しくなっちゃいますよね!
種昻さん
そうなんです。若い頃によく見ていた本に載っている住宅が富山にあって、それを偶然発見して…。この写真は僕の思い出が詰まった一枚ですね。死ぬまでにこの住宅の中に入ってみたいと思っています(笑)。
ことちゃん
次は沼さんの「ニッチな一枚」をお願いします。
沼さん
はい。これはニッチですよ!
ことちゃん
あ!この写真、私わかります!
沼さん
実は僕、隙間が好物でして…。スズキーマ(富山市西町のカレー屋)さんの隣にあるスキマの写真です(笑)。隙間を見ると、どうやって活用できるかなとすぐ考えてしまい、ワクワクしてくるんです。
ことちゃん
スズキーマさんもそうですけど、この隙間の奥には葷酒山門(くんしゅさんもん)さんなど、オシャレで魅力的なお店が並んでいますよね!
沼さん
そうですね。西町付近は、TOYAMAキラリや大和など大型建築が並ぶ中心街なので、こうした「隙間」が貴重だと思います。街中を歩いていて、たまに見つける隙間を見ては興奮しますね。
ことちゃん
確かに隙間は、郊外には無い街中ならではのスペースですね!沼さん、ありがとうございます。
ことちゃん
さて、これまで3枚の写真をもとにトークを繰り広げてきましたが、最後に私からお聞きしたいことがあります…!おふたりが「今後、富山に残していきたいケンチク」についてお教えていただけますか?
種昻さん
建築的な意味合いと少し沿れますが、「まるぜん精肉」(富山市西中野本町)さんです。
ことちゃん
コロッケが美味しいと評判のまるぜん精肉さんですか!
種昻さん
今はプライバシーの保護が大事になっている時代で、「閉ざされている建築」が増えているように思います。買い物客で溢れるまるぜんさんのように、「人の賑わいや集まりが見える建築」をこれからも残していきたいですね。
ことちゃん
それはまさに、種昻さんが運営されている「RAIL SIDE TABLE」や沼さんが設計を手掛けられた「花水木ノ庭」のようなまちに開かれた建築を指すのでしょうか!?
種昻さん
そうですね、中で何か動きが見えたりするだけで安心感があるし、楽しそうなまちだなって感じ取ることが出来ると思います。
ことちゃん
ありがとうございます!それでは沼さん、お願いします。
沼さん
具体的な建築物や施設ではないのですがお許しを。建築は設計し施工して、完成して人が使う。これは建築の一般的な流れだと思いますが、この流れが少し変わればいいなと思っています。例えば、利用者が計画段階から参加したり、施工過程で関わったりする。そうすると、自然にその建築に並々ならぬ愛着が増して、より愛される建築に育っていくのではないかと感じています。
ことちゃん
一般的に一つの建築について、誰が設計して、どんな想いでつくられたかを感じる機会はあまりないかもしれませんね。こうした情報がオープンになればもっと建築を楽しめる予感がします!種昻さん、沼さん本日はありがとうございました!
ご来場いただきました皆さま、ありがとうございました!
第2回目のトークセッション、あるかも!?