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連載記事

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職人タイムス

現場で働く職人さんを紹介する「職人タイムス」13回目は、氷見市の有限会社鎌仲建設代表取締役の鎌仲和紀さんです。道路や砂防の工事など、地域のインフラを守る公共工事で活躍する土木のお仕事。機械やシステムが進化しても、そこにはしっかりと職人技が生きていました。ぜひ最後までご覧ください!
職人タイムスvol.13 鎌仲建設 鎌仲和紀さん

氷見市の鎌仲建設さんにお邪魔し、インタビュー!

ラボ

まずは、鎌仲さんが普段されている「土木」のお仕事について教えてください!

鎌仲さん

「畑の砂が欲しい」から、一般住宅の土間なども造ったりしますが、メインは公共工事です。道路や河川、特に氷見は地滑り多いのでそれを防ぐための砂防工事が年間を通して一番多いですね。公共工事の時には、入札前に現地を確認して、現場がどんな状況で、どういったものを造るかを把握したうえで、シミュレーションをしっかりと行うことを大切にしています。

氷見市を中心に、人々の生活に必要不可欠なインフラを整備する鎌仲さん

ラボ

公共工事はどんな流れで行われるのですか?

鎌仲さん

例えば砂防工事の場合、工事が決まれば施工計画書を提出し、現地の測量、木の伐採、掘削をした後に型枠をつくり、コンクリートを打つ作業を繰り返します。

また、地権者や地元の区長さんとの交渉も私たちの役目です。人が出入りしないような山に道路をつくるときは、地権者同志の揉め事が始まったり…様々なことがあります(笑)。こうした交渉ごとも私たちの仕事です。

必ず事前に現場を確認。最も大事にしていることだ

ラボ

鎌仲さんがこの業界に入ったキッカケを教えてください。

鎌仲さん

祖父が会社を始めて、物心ついた頃から重機に乗ったりする姿を見てカッコいいなと思っていたので、この仕事に進むことは決めていました。工業高校で土木を勉強し、神奈川の建設会社で3年ほど働いた後、富山に帰ってきました。当社に入ってしばらく経った頃に、初めて自分の担当した工事が表彰されたことが嬉しくて、ドンドンこの仕事にのめり込んでいきましたね。

自らが担当した現場で初めて表彰された工事。「この表彰が嬉しくて嬉しくて。今でも忘れられない」と話す鎌仲さん

ラボ

社長にはいつ就任されたんですか?

鎌仲さん

当時社長だった父が8年前に突然不慮の事故で急死したんです。当時36歳だった私が突然、社長を引き継ぐことになりました。それまでは建設業協会などにも顔を出したことがないし、社長としての立ち回り方が全くわからなかった。最初の2〜3年は本当に大変で、不安しかありませんでした。

社長になっても毎日現場に出る。シンプルに土木の仕事が好き

ラボ

これまで一番苦労したことはなんですか?

鎌仲さん

一時期、社員は8名いましたが、私も若かったのでコミュニケーションが上手くいかず、大半が辞めていき残った社員は1人だけ。その時に自分の考え方を変えなければいけないと改めました。今はこうして、自分で考えて動いてくれるメンバーが集まってくれて、本当に感謝しています。

鎌仲建設さんのメンバー。「現場を離れてインタビューを受けれるのも社員のおかげ」と鎌仲さん

ラボ

鎌仲さんが思う「土木の魅力」って何ですか?

鎌仲さん

コンクリートであれば、型枠を外すまでどうなっているのかわからない。やり直しが効かない分、仕上がりに満足できるよう、一つの現場に全力で取り組んでいます。建物も一緒ですが、そこにしかない世界に一つのワンオーダーを作っていることは、やっぱり大きなやりがいですよね。

ラボ

土木の「職人技」とはどんなところですか?

鎌仲さん

高卒で入った会社でまず上司に言われたのが、「現場監督になりたいのか?じゃあスコップを持て」でした。今となれば理解できますが、その人が言いたかったのは、現場を知らずして管理なんかできないということ。そこが自分の原点になっています。

土木は重機に乗るし、型枠工事もやるし、なんでもやる。それを好きになって色々と触れていくと、面白くなるし上達にもつながる。最後の最後はやっぱり人間の手仕事なんです。

ラボ

土木工事はICT化が進んでいます。鎌仲さんはどう感じていますか?

鎌仲さん

それなりの現場規模でないと、やはりまだまだ活用することは難しい状況です。私たちの現場は、重機のオペレーションや手元を一つとっても職人のノウハウが必要です。特に氷見は土質が悪いので、設計通りに施工しても崩れてしまうことがあります。

現場をしっかり確認し、「このまま進めると危ない」と思えば、しっかりと寝かせてから進めたり、土留めを自社判断でやったり。こうした判断力は、職人としての経験が必要ですね。

土木工事においても職人技と経験が絶対に必要

ラボ

鎌仲建設さんには、若い社員さんもいらっしゃるんですか?

鎌仲さん

今19歳の社員が1人います。若手が頑張ってくれているのは嬉しいですね。ウチは平均年齢も比較的若い会社ですし、活気があると思います!

 

今回お邪魔した現場は、山からの土石流を食い止めるための谷止工

道に敷かれているのは「土木マット」と呼ばれるもの。「歩きにくいので気をつけてください」と優しい鎌仲さん。はい、本当に歩きにくい…です(苦笑)

空気が美味い!マイナスイオンが半端じゃない現場。たまに鹿が出現するそうです

鎌仲建設で一番の若手、山本和樹さん

この現場で働く山本さんは、入社3年目の19歳。「この仕事に就く前は力仕事が多くて、天候にも左右されるし大変な仕事だろうなと思っていました。ただ、実際に入ってみると想像以上に重機がハイテクで、体力勝負ではなくて問題なく仕事をしています。同じような仕事でも、場所に応じて施工手順も違うので、毎回新しい発見があることが一番の魅力です。普段の生活では見ることが出来ない景色の中での仕事は、とても刺激があって面白いです」と山本さんが話してくれました。

印象的だったのは「笑顔」。仕事の楽しさがヒシヒシと伝わってきた

ラボ

この現場のこと、詳しく教えてください!

現場代理人の山本幸信部長。実は山本さんのお父さん。親子で鎌仲建設を盛り立てる

山本部長

コンクリートの打設工事で、土石流を食い止めるための谷止工です。工期は約半年。6月の大雨を想定して、できる限り工程を早めています。コンクリートの品質が非常に大事。クラックが入らないようしっかりと養生して、何回にも分けて打設していきます。打設面に釘や木くずが一つも残らないようにホウキで綺麗に掃除することを徹底していますね。

現場を確認する鎌仲さんと山本部長

山の現場では、万が一に備えて緊急の避難場所を確保している

ラボ

鎌仲さんの「夢」を教えてください!

鎌仲さん

やっぱりこの土木の仕事に対して、若い人に興味を持って欲しい。自分なりにSNSで情報を発信したり、ユニフォームや社用車も少しでも新しくてカッコいいものにして魅力的なものにしていきたい。社員や家族が誇りを持って、「好きでやっている!」と胸を張ってもらえる職業にもっとなればいいなと思っています。

鎌仲さんは建設業を営む傍ら、山葡萄の栽培も…!亡くなられた先代社長が始め、今は鎌仲さんが引き継ぎ手塩にかけて育てている。栽培した山葡萄の「氷見山ぶどうジュース」は夏前に完売するほどの人気ぶり

ラボ

最後に学生や若者にメッセージをお願いします!

鎌仲さん

私にとっては、現場で機械を使うのも楽しいし、時には泥にまみれるのも全てが土木の魅力なんです。好きでやっていたら何をしていても苦にならない。だからこそ、この仕事をやりたい人にやってもらいたいです!楽しみながら仕事をして、それが富山県や氷見市、地域のため、人のためになる。この仕事は必ず誰かのためになる。それが土木の誇れる、素晴らしいところだと思います。

鎌仲和紀さん

PROFILE

有限会社鎌仲建設

〒935-0025 富山県氷見市鞍川3066-1
TEL 0766-72-6139

鎌仲和紀さん

【生年月日】1977年3月16日
【家族構成】母、妻、長女、次女、猫2匹
【趣味】ラーメン食べ歩き。富山ブラックが大好きで、実はSNSにアップしている4〜5倍は食べてます(笑)
【座右の銘】「とりあえず、やってみろ」 みんなができないことに挑戦する