連載記事
氷見の『HOUSEHOLD』、高岡の『Bar monos』など、おしゃれで感度の高い店舗や住宅を数々つくり出してきた江嵜さん。音楽に没頭していた青年が、どのようにして建築の世界へとたどり着いたのか、深掘りしてきました!
ラボ
本日はよろしくお願いします!まず、江嵜さんは建設業界に入る前、どんな学生(高校生)でしたか??
江嵜さん
そうですね。音楽にハマっていて、高校1年の時くらいから友達とバンドを組んでドラムを叩いてました。最初はメロコアやパンクから入りましたね。

GO代表の江嵜さん。これまで取材した大工さんとは少し異質なオーラを感じます
ラボ
バンドマンだったんですね!どんなバンドが好きだったんですか?
江嵜さん
Green DayやOffspringとかにハマって、それからセックス・ピストルズ、クラッシュのパンクにいって、ニルヴァーナのオルタナ、レディオヘッド、リバティーンズに流れたりしました。
僕らの世代は、邦楽よりもそういう洋楽を聴くのがカッコいい! みたいな空気がありましたね。

取材はGOスタッフさんのワークスペース「ROOM」にて

取手がキュート
ラボ
かなり本気で音楽に打ち込んでいたんですね。そこから建築の道に…?
江嵜さん
高校を卒業して、最初は親の紹介でガラス工場に入ったのですが、一年くらいで辞めてしまって。そのあと完全にニート生活で、ずっとスタジオに入ってドラム叩いてました。
けど、「ドラムでは飯食えないかな〜」とは思いました(苦笑)。

ラボ
夢を追っていた時期なのですね!
江嵜さん
そうですね。ただお金もないし、このままだとマズイなって。たまたまハードコアのバンドをやってる先輩が大工もやっていて、それがめちゃくちゃカッコよくて。「こんな生き方もあるんだ」って思って見ていました。
その先輩に弟子入りしようと思ってお願いしたんですけど、叶わず。それで地元のハウスメーカーに就職することにしたんです。
ラボ
ハウスメーカーでの修行時代はどうでしたか??
江嵜さん
19歳から24歳までの5年間、いわゆる住宅大工をしていました。ハウスメーカーなのでプレカットで建築を進めていきます。効率重視で早く建てる、みたいな感じで。
それはそれで大事なんですけど、正直自分としてあまり面白さを感じることができなくて。
ラボ
それで、独立することになったんですね?
江嵜さん
そうですね、24歳の時でした。ただ、独立と言っても最初はハウスメーカーの下請けみたいな感じでした。すぐに仕事が舞い込んでくるはずもなく、安い単価でたくさん仕事をこなす流れでした。
ラボ
一番大変だった時期はいつ頃ですか?
江嵜さん
独立して5年目くらいですかね。29歳の頃。ハウスメーカーの仕事を抜けて、自分のやりたい仕事をしようとしたんですけど、仕事が減ってしまって。従業員の給料も払えなくなりそうで、あの時は本当に大変でした。

ラボ
その時は、どう乗り越えられたんですか?
江嵜さん
周りのいろんな大工さんに助けてもらいました。現場の応援に行ったり、アパートの仕事をやったり。やりたい仕事かどうかじゃなく、あのときは必死で、なんとか凌いだ感じですね…。
ラボ
これまでを振り返って、転機はありましたか?
江嵜さん
様々な建築士の方と出会ったことですね。
一緒に仕事をさせてもらった時に衝撃を受けて、「これがやりたかったことだ!」って感じたんです。特に空間への考え方ですね。収まりや意匠とか。
これまで自分が手掛けてきた住宅とは全然違いました。何人もの建築士の方達と仕事をさせていただいた中で、自然とリノベーションの仕事を手掛ける機会が多くなりました。

GOが施工を手掛けた氷見の海辺の宿「HOUSE HOLD」。古いビルをリノベーション。 写真は1階のカフェ
ラボ
新築よりもリノベーション(改修)に江嵜さんの「アンテナが反応した」ということでしょうか??
江嵜さん
そうですね。改修が一番好きです。臨機応変に構造物を合わせていく。古いものが綺麗になっていく感じがいいんですよね。古材や古い鉄板が。
人によっては、ゴミと思われるものをよく集めていて、削ってみないとわからない木だったり、削ったらめちゃくちゃかっこいい木目が出てくることもあって。その発見が面白いんです。

GOが設計・施工を手掛けた高岡市中心街にあるサウンドバー「monos」。理想の音作りために建材やスピーカーの角度や配置までこだわられたそう…!

解体時の廃材を利用したmonosのスツール

GOがリノベーション設計・施工を手掛けた「M HOUSE」。室内が明るく、開放感たっぷり
ラボ
住宅もしくは非住宅(店舗など)の現場、どちらを受注することが多いですか?
江嵜さん
住宅が7割くらいで、ほとんどがリノベーションです。新築はやらないようにしています。
ラボ
お仕事の依頼やお話は、どのようにして江﨑さんに届くのでしょうか?
江嵜さん
インスタが多いですね。
ラボ
なるほど!インスタの施工例もおしゃれですし、GO STOREが気になります!

作業場と併設する「GO STORE」。

スツールやベンチ、サイドテーブルなどGOオリジナルのプロダクトが並んでいます。

パークベンチ。ベンチとしては勿論、ディスプレイにも◎

壁掛け棚。ペン立てもオリジナルのプロダクト
江嵜さん
ありがとうございます(笑)。GO STOREに並ぶプロダクトは全て、建物の解体時に発生した古材や廃材を利用して製作しています。
インスタの投稿から、DMなどを通じて仕事の問い合わせや相談を頂くことがありますし、僕の仕事の世界観をわかって依頼を頂けるので、仕事はすごくやりやすいですね。

氷見番屋街にある昆布のコンセプトショップ。GOが施工を担当
ラボ
この仕事、大工としての魅力はどこにありますか??
江嵜さん
やっぱり、形になることですね。自分の頭の中にあるものが、実際の空間になる。それは面白いです。
ただ、僕は自分の作品を作っている感覚はなく、施主の頭の中を形にすること。僕らはあくまで黒子だと思っていますし、それが僕たちの仕事です。

建築は作品ではなく、全て施主のもの。それを叶えるために自分たちの仕事をするだけ
ラボ
GOはどんな「チーム」であり「職人集団」ですか?
江嵜さん
GOは、妻と社員が一人、あとは外部の職人たちで構成しています。
板金屋さん、防水屋さん、その道のプロの方々と一緒に手掛けています。外部の業者さんというよりも仲間やバンドみたいな感覚で、価値観が合う人たちとチームを作っている感じです。

GOの社員であり江嵜さんの右腕、麻(あさ)さん。

楽しそうに作業されている姿が印象的
ラボ
ちなみに「GO」の名前の由来が知りたいです…!(ずっと気になっていました)
江嵜さん
GOは、ラモーンズやランシドなどのパンクバンドがよく「GO」という単語を使っていたところから決めています。
今も元バンドメンバーの仲間がGOにいますし、バンド仲間が出入りする地元の洋服屋さんのつながりを通じて、仲間になっている人も多々います。
ラボ
長年の疑問が解決しました(笑)。江嵜さん、そしてGOの根っこには「バンド」の存在が大きいんですね!
江嵜さんの今後の目標を教えてください!
江嵜さん
今39歳なので、独立してもう15年目。そろそろ人を育てるフェーズなのかな、とは思っています。
ただ、今までと変わらず、「設計から施工までやる建築」というのは見せていきたい。設計・施工全て含めて建築だと思うので、そこはこれからも貫いていきたいです。

ラボ
では最後に、とやま建設ラボを見ている学生さん達にメッセージをお願いします!
江嵜さん
好きなことを見つければイイと思います。建築じゃなくてもいい。僕も最初から建築をやろうと思っていたわけじゃないけど、流れの中でここに来た。実は好きなことって、もう見つかっていると思うんです。
やらなくてもいいのに、ついやってしまうこと。それもたぶん好きなことの一つなんじゃないのかなと思います。
好きな事は無理に探さなくてもいい。焦らずに自然に選んでいければそれでいい。
ラボ
ついついやってしまうこと=好きなこと。普段は気づいていないけど、私もそんな事があるのかもしれません…!
江嵜さん、お忙しい中ありがとうございました!