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卓越した技術と柔軟な発想力で、手掛けた物件は2年連続で富山県建築文化賞を受賞!格言いっぱい、読み応えたっぷりのインタビュー!
![職人タイムス vol.9 大野創建 大野文也さん](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/bnr-ohno-700x350.jpg)
今回は、高岡市金屋町に先月オープンした民家ホテル「金ノ三寸」にお邪魔してインタビューを。金ノ三寸は、明治期から昭和初期に建てられた古民家2棟をリノベーションしたもの。総合プロデュースはG N L(グリーンノートレーベル)、設計は濱田修建築研究所、施工を大野創建が手掛けました。
千本格子の外観は、当時の様式を忠実に復元し、横壁は下見貼り工法で杉板を張り合わせられています。庇の一部は「こけら葺き」といわれる杉板を何枚も重ね合わせていく工法で作り替えられました。
![金屋町「金ノ三寸」 ノ・三・寸を組み合わせると「寿」に](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/1.jpg)
「金ノ三寸」 金・ノ・三・寸を組み合わせると鋳物の「鋳」に (撮影=内山昭一)
![インタビューはこの素晴らしいお部屋で。キ、キンチョーする…](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/20cfce153c6dcbd30dc35695758066ae-3.jpg)
インタビューはこの素晴らしいお部屋で。キ、キンチョーする…(撮影=内山昭一)
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ラボ
「大工さん」は世間一般にも聞き覚えのある職業だと思いますが、改めて大工さんのお仕事を教えてください!
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大野さん
僕の中では大きく3つあります。まず1つ目は、ハウスメーカーなどのプレカット工場で、寸法通りに加工された材料を図面通りに組んでいく仕事。これが今の富山では主流です。2つ目が、昔ながらの工務店のように墨付けして刻んでいく。いわゆる世間の大工さんのイメージに一番近いですかね。
最後に、お寺などを建てる宮大工。伝統の技術を常日頃から習得していて、釘を使わずに木を留めるなど、高度な知識と技術が要求されます。
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大工は大工でも色々あるんですね
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ラボ
大野さんは、どの大工さんにあたりますか?
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大野さん
私は、1〜2つ目の昔ながらの大工ですね。新築は基本、プレカットされたものを扱います。改修などで複雑なものがあれば墨付けから刻み仕事まで全て自分で行い、現場で長さを取って、その場で加工しながら建てていきます。
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ラボ
昔ながらの大工。カッコいいですね!でも、技術を習得するには相当な修行が必要ですよね?
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大野さん
僕は、まず19歳で八尾の工務店に入社しました。実を言うと、最初は大工でなく、土木工事をやりたかったのですが、その工務店が住宅やお寺を手掛けていて、「若いんだから、まずは大工をやれ!」と当時の社長に言われたのが大工人生のスタートでした。そこで親方と一緒に県外のお寺を建てに行ったり、25歳くらいまで働かせてもらいました。
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匠のオーラが半端じゃない大野さん
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ラボ
そこで、大工としての技術を習得されたんですね?
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大野さん
いえいえ。大工としてのレベルが10あるとしたら、2くらいで辞めちゃったので(笑)。その後に、また別の親方のところに修行に行ったんです。そこではマンツーマンで教えてもらって、刻み仕事なども任せてもらえて、今の礎が出来ました。わからない事は何でも聞きやすい親方だったので、本当に勉強になりましたね。その会社にも5年程いて、30歳で独立しました。
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ラボ
独立に「きっかけ」ってありましたか?
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大野さん
自分の実家が、おわら風の盆が行われる町の真ん中にあったんですが、ある時にもらい火で燃えてしまったんです。じゃあ、自分が一人で建ててみようと思ったんですが、金看板(建設業許可票)がなかったので、とある会社に協力してもらって設計士さんと一緒に相談しながら、実家を建てました。それが独立の一歩です。
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ラボ
独立への不安はなかったですか?
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大野さん
全くなかったですね(笑)。成功する希望しかなかったです。その頃はハウスメーカーさんからの下請けがメインだったので、将来がどうとか考えずに、「今日はこういう風にやろう」と、とにかく必死に仕事に向かっていました。ただ、下請け仕事を2~3年やっていくうちに、「自分で仕事を受けてやりたいな」「設計事務所と仕事をしてみたいな」と、日頃から思うようになってきたんです。
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ラボ
そこから徐々にシフトチェンジを?
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大野さん
八尾で知人に頼まれて家を建てさせてもらった時に、内見会に富山の建築家、濱田修さん(濱田修建築事務所)が見に来られたんです。その縁で、濱田さんと一緒に射水市の「石籠の家」を建てさせてもらいました。これがキッカケで設計士さんと一緒につくりあげる楽しさを知りました。
![「石籠の家」は2019年度グッドデザイン賞を受賞](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/5b398eeaa9d4e5cbd78497cfa5d68afd-3.jpg)
「石籠の家」は2019年度グッドデザイン賞、第50回富山県建築文化賞を受賞(撮影=内山昭一)
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ラボ
具体的にはどんな点が楽しいんですか?
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大野さん
「図面がこうだから、こうして」といった仕事の振り方じゃなくて、「こうしてみたいけど、どう?」のスタンスなんです。施工側の意見も取り入れてくれて、みんなでより良いものをつくろうと。そこまで施工側の意見や考えまで取り入れてもらえると、何があっても僕から「無理」という言葉は意地でも出せないですよね(笑)。濱田さんは完成までの工期中、週一回必ず、施主さんと協力業者を交えた定例打ち合わせをするんです。手掛けるものに妥協がない方なので、僕も創意工夫しないとついていけない。大変ですが、それが面白い。
![富山市総曲輪の「あまよっと横丁」も濱田さんとタッグを これも2019年度グッドデザイン賞を獲得](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/eba117ff5d58c6bf1f96e4940afb87de-1.jpg)
富山市総曲輪の「あまよっと横丁」も濱田さんとのタッグ。2019年度グッドデザイン賞、第51回富山県建築文化賞を獲得(撮影=内山昭一)
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ラボ
この民家ホテル『金ノ三寸』について教えてください。
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大野さん
ここは、濱田さんとタッグを組ませてもらい、古い空き家を2棟リノベーションしてホテルにしました。ここ金屋町は、高岡銅器発祥の地。柱などはそのまま使って、到る所に真鍮や銅を施す工夫がしてあります。グリーンノートレーベルの明石さんがセレクトしたインテリアや工芸作家さんの作品も相まって素晴らしい空間になっています。「防空壕」をそのまま生かしたホテルなんて他にはないですよね。
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(撮影=内山昭一)
![大野さんが特にお気に入りと話す照明](https://www.kensetsu-labo.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/57b8ad171c27ba4a3f9ece1dc83d4034-1-scaled.jpg)
大野さんが特にお気に入りと話す照明と階段(撮影=内山昭一)
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ラボ
建築のものづくりに醍醐味を感じます!
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大野さん
建築には絶対に「図面」があります。ただ、その図面も必ずしも100%の出来じゃないわけです。工事が始まると、「もうちょっとこうした方が良い」などは必ずと言っていいほど出てくるので、マニュアルはあるようでないんです。施主さん、設計士さん、そして我々施工者を含めたキャッチボールが大事だと思います。考えながら動く、そうするとアイデアが生まれる。それが仕事。利益も大事ですが、とにかく良いものを作りたいと思って日々動いています。
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ラボ
大工人生の中で、挫折はありましたか?
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大野さん
辛い時はありましたが、辞めたいと思ったことは一度もないですね。やり遂げなければならない気持ちと責任を持って、ガムシャラにきました。仮に人生80年あるとしたら、たかだか一週間辛くてもそれは一瞬にすぎない。「おかげさまです」「ありがとうございます」の感謝があれば、なんてことはないですね。
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良いものを作る為には妥協しない。過去には予算がなくて自ら出費して仕上げたことも
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ラボ
失敗して落ち込んだりしないんですか?
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大野さん
いや、こう見えてけっこう落ち込むタイプです(笑)。ただ、2~3日くらいで吹っ切るようにしています。「なんとかなるなら悩めばいいけど、悩んでどうにもならないんだったら、悩むな」と親によく言われていたので、切り替えますね。
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ラボ
最後に、大工を夢見る若者に一言お願いします!
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大野さん
建築の専門学校を出ても、まだ大工としての階段は一段も上っていないので、卒業しても3~5年はまだまだ修行の身。壁を乗り越えたら、また壁がやってきて…の繰り返し。大工にゴールはないんです。だからこそ、夢中になれます。今後は空き家も増え、リノベーションなどが多くなります。新築より困難な現場が多いので、職人としては絶対に楽しい。今後は、大工仕事も伝統的な技術とデジタルや情報化などのハイブリッドの流れにはなっていくと思いますが、だからこそ技術を懸命に磨き、新しいアイデアで勝負して欲しいですね。若者には負けません(笑)