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連載記事

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ケンチクノワ

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家12名によるリレーブログ。
テーマに沿って、12名の建築家が建築設計に対する想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
2周目のテーマは、「完成までのプロセス(人との出会い)」です。

※毎週火曜日に掲載

DOKO一級建築士事務所

道古(どうこ) 麻紀子(あきこ)


テーマ vol.2完成までのプロセス(人との出会い)

「知恵が表現を豊かにする」

独立したての頃は、施主とお話した内容や最初に土地を見たイメージを形にし、ファーストプランを詰め、完成まで進むことが多かったように思います。

ここ何年かは、最初のイメージは少しだけ頭の片隅にはあるけれども、ファーストプランとは少し違ったものが完成することが多くなってきました。いつからなのだろうか…と考えてみましたが、「姉と二人で設計をするようになってからだな」と、このお題に向き合った今、わかりました。

姉妹ですから、幼い時から長く時間を共に過ごし、同じものを目にする機会が長かった点もあって感覚は似ている二人なわけです。大枠は変わらないのですが、時々ハッとすることがあります。

あんなに自信満々でご提案したファーストプランなのに、この部分をもっと考えていきたいよねといった共通部分を残し、「やっぱり一から作り直そう!」と考え直すことがあります。施主に受け入れてもらえるかなぁとドキドキしながら、「当初と全く違う案なのですが・・・」とご提案して、受け入れて頂き、そのまま完成までいくことが多くなりました。

こうして完成した施主と私たちの想いが詰まった図面を基に、施工してくださる現場監督、各業者の方々に、本当に恵まれているなぁと日々感じています。どうしても譲りたくない、こうしたいといった気持ちをわかってくださる方々に多く出会うことが出来ました。

図面に書いてあることだけでは建築は完成しません。その建築に関わっている方々と一緒に考えて、それぞれの知恵を出し合い、最善の形を見つけていく。この作業が大好きでなりません。

ある住宅の現場で現場監督さんが、「この家のこの部分が見せ場やぞ!」と各業者さんにお話しされていました。監督さんの意気込み通り、細かく打ち合わせた部分は、私の頭で思い描いていたとおりの形を表現してくれました。

         

 

また違う現場でのこと。「あ〜こんな感じになってしまったかぁ…」と想定していない部分があり、じっとその場で立ち尽くしてしまった事がありました…。どうにか壊さずに、もっとキレイになる形はないかなと、考えても考えつかず、その日はモヤモヤを抱えながら帰路に着きました。次の日、どうしても気になって現場に行ったら、なんと!スッキリ解決しているではないですか!大工さんが、「こうしたかったんやろ?」とドヤ顔で言った時の笑顔が、今でも忘れられません。

 

         

またまた違う現場でのこと。大工として、こうした収まりは難しいと言われた天井材の施工部分がありました。この天井部だけはどうしてもスッキリ収めたいと打ち合わせを職人さん達としていたら、家具屋さんが「位置だけ出してくれれば、僕できますよ。だって、この収まりが一番キレイですもんね」と言ってくださいました。家具屋さんが天井?!思いも寄らなかったことでしたが、それぞれが意見を出し合って共有した結果なので、今振り返っても感謝の気持ちでいっぱいです。

これから、どんな施主やどんな関係者の方々とお仕事をご一緒できるのでしょう。共に知恵を出し合い、表現を高め、そこにどんな変化が生まれるのか。これから楽しみでなりません。

道古麻紀子

PROFILE

DOKO一級建築士事務所

〒939-0275 射水市八塚452
TEL.0766-52-6112
FAX.0766-54-5119
http://www.doko-arch.com

道古麻紀子

1979年 富山県生まれ
2002年 金沢工業大学卒業
2002年 濱田修建築研究所入社
2010年 DOKO一級建築士事務所設立
2015年 金沢工業大学 非常勤講師
現在に至る

一級建築士