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連載記事

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ケンチクノワ

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家12名によるリレーブログ。
テーマに沿って12名の建築家が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。

※毎週火曜日に掲載

中斉拓也建築設計

中斉(なかさい) 拓也(たくや)


テーマ vol.1 建築設計との出会い

「好きこそものの上手なれ」 

私が『建築設計』という仕事を知ったのは24歳の頃です。つまり、高校や大学では全く建築を学んでおらず、建築家の存在すら知りませんでした。ただ、何となく素敵な住空間や商業空間が好きで、大学の卒業を迎える頃には周りに右倣えで就活をし、リフォーム会社の営業職に内定していました。しかし、人生は不思議なもので、この後、私の人生は思いもよらぬ方向へ急展していきます。

22歳の当時、大学の休暇中に里帰りし、地元の友人と遊んでいた際、交通事故に遭い、頭部に怪我を負ったことで後遺症を患うことになりました。それが原因で内定していた会社にも就職できず、路頭に迷うはめに・・・。それでも、楽観的な性格も手伝って、歩む道を再選択できるチャンスと思い、専門学校でインテリアデザインを学ぶことを決めました。そこで私は運命の出会いをします。

当時の担任講師に「インテリアデザインをやりたいのなら、君はまずは建築を学びなさい」と助言され、導かれるがまま、その担任講師が独立前に在籍していた出江寛建築設計事務所に見習いとして、学校と並行しながら通う生活がスタートしました。これが私にとっての最初の『建築設計との出会い』です。建築設計事務所という存在があることも知らずに生きてきた当時の私には、その仕事内容や建築に対しての考え方など、全てが新鮮で面白くて、自分の中に『建築設計』というものがストンと入ってきた感覚は今でもはっきりと覚えています。

見習いとして通っていた出江寛設計事務所

その頃、建築設計に関する本にも初めて触れました。お世話になっていた出江寛さんの「数寄屋の美学」という著書です。時々、事務所に来られると、この著書に書かれていることを面白おかしく咀嚼しながら解説してくださり、より一層『建築設計』の世界へ引き込まれていきました。

初めて触れた建築設計に関する本

当時、『建築設計』ついて調べていると、アトリエ系…、独立…、建築家…というフレーズが出てきました。どうやら、アトリエ系の事務所に行く人は独立を前提としている人が多いことが分かり、それならば自分も!という思いで、専門学校を卒業後、今度は自分の意思で建築設計事務所の門を叩きました。

その後、建築設計ド素人の私は約8年間、無我夢中で師匠と先輩のもとで実務を積みながら建築を学ばせてもらいました。仕事に携わるなかで沢山の現場監督や職人と接し、建築を通して様々な職種の方にも出会うことができ、とても有意義であっという間の修行期間でしたが、常に自分に対する不甲斐なさや葛藤、周囲と比べての劣等感などの気持ちを抱えながらの日々でもありました。

独立後も自分の中で様々な葛藤と戦いながらも、今、こうして建築設計の仕事を続けていられるのは、導いてくれた恩師や建築を好きにさせてもらえた師匠に出会え、常に新しい『建築設計』に出会わせてくれるクライアントがいてくれるからです。これから『建築設計』の道に進もうとしている人や建築家を志している道半ばの人は、建築を好きになれる出会いを沢山してもらいたいです。

「好きこそものの上手なれ」

ありきたりな言葉でとてもシンプルなことですが、『建築設計』を生業とするならば、建築の仕事を好きで居続けられることが一番大事なことだと、今、改めて感じています。

中斉拓也

PROFILE

中斉拓也建築設計

〒939-8206
富山県富山市布瀬町1-8-1
TAKAISHI Bldg2F
https://www.nkstky.jp

中斉拓也

1980年 富山県生まれ
2004年 バンタンキャリアスクール卒業
2004年 芦澤竜一建築設計事務所
2005年 濱田修建築研究所
2012年 中斉拓也建築設計設立