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連載記事

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わかもん

富山工業高校生のプランが基になり、全国に先駆けて整備される職住一体の施設「富山県創業支援センター / 創業・移住促進住宅」が今年秋にオープンします。「わかもん〜高校生のプランが現実に〜」は、「建築家 仲俊治✖️富山工業高校教諭 藤井和弥✖️とやま建設ラボ」の3者によって、この施設の完成までを綴るコラム連載です。

※隔週火曜日に公開

とやま建設ラボ()()


「紡がれてきた想いと伝統」(前編)

2017年建築甲子園ー。

富山工業高校は見事、日本一に輝き(2016年も優勝)、2連覇を果たしました。あれから約5年の月日が経過し、2017年の優勝作品を基にした職住一体の施設「富山県創業支援センター/創業・移住促進住居」(以後:蓮町事業)が、富山市蓮町で整備されています(現在施工中!)。

創業支援センター等の事業化は2019年に決定。この年から富山工業高校3年生は、蓮町事業に大きく関わることになりました。計画地である富山市蓮町の「旧県職員住宅」のフォトコンテストや現地の見学、プロモーションムービーの作成など、様々な角度から蓮町事業について理解を深め、携わってきました。

2020年度の3年生は、創業支援センターの1階カフェに設置する椅子や照明の製作に取り掛かり、試作品を仕上げました。そして2021年度の3年生は、一つ上の先輩が製作した椅子や照明などをブラッシュアップして完成させました。

椅子と照明のほか、カフェの壁面に描くグラフィックデザインやベンチ、お店の看板などを手掛け、2月4日に製作発表会を開き、2ヵ年続いたワークショップに幕を下ろしました。
※ワークショップに関することは、「わかもん」藤井先生のコラムで寄稿いただいています!

今回は、富山工業高校建築工学科3年生の小林純大(こばやし あつひろ)さん、中村陽愛(なかむら ひなり)さん、北野陽菜(きたの ひな)さんの3名にインタビューを!

蓮町事業の想いやワークショップのこと、高校生活のこと、この先の将来のこと。前編と後編の2部編成でお届けします。※取材は2月下旬に実施。

ラボ

ご卒業を間近に控えた中、今日はありがとうございます!皆さんの高校生活にとって、とても思い出深いことと言えば、やはり蓮町事業のワークショップではないかと思います。まずは、ワークショップでのご自身の役割や担当を教えてください。

インタビューは富山工業高校の教室にて

小林さん

1年間続いたワークショップは、前期と後期で分かれ、自分の役割や担当、一緒に取り組むメンバーも変わります。前期は椅子の「結」を担当しました。結は、部材の切り出しから、座面・背面の「糸編み」を全て自分たち(7人のメンバー)でやっていました。後期はグラフィックで、創業支援センター1階カフェの壁面に描くグラフィックデザインを担当していました。

椅子とグラフィックを担当された小林さん

中村さん

前期は小林くんと同じく、「結」を担当しました。後期は照明の「Ori」を担当しました。Oriでは絹を折ったり、生地を作ったりしていました。

椅子と照明を手掛けた中村さん

北野さん

前期は照明の「紙風船」。一つ上の先輩が作った照明の細かな部分をブラッシュアップしました。後期は、ベンチと看板の「エクステリア」を担当し、私は看板の製作を手掛けました。ヴィンテージ風の看板です。

照明とエクステリアを担当した北野さん

椅子は左から「緒」「Curve Chair」「結」「GATHER」

照明は左が「Ori」、右が「紙風船」

ラボ

蓮町事業は2017年の建築甲子園から全てが始まったわけですが、先輩から脈々と受け継がれてきたこの伝統(蓮町事業やワークショップ)は、ご自身にとってどんな想いがありますか?

小林さん

蓮町事業のプランを考えられた先輩達と直接会ったことはないのですが、蓮町事業は代々受け継がれてきた事業で、自分たちが集大成の年になりました。先輩達の想いをしっかり紡ぎつつ、カッコイイものに仕上がること、そしてしっかり収めることが出来るように、先輩たちの為にも頑張ろうと思って取り組んできました。

ラボ

昨年4月から集大成となる2年目のワークショップが始まりましたが、当初からその熱い想いはありましたか?

小林さん

始まった当初は、ワークショップについて理解できない部分が多かったです。先生方の説明を受けて、自分が思っていたよりも「大きな事業なんだな!」と徐々に理解を深めていきましたし、責任感が湧いてきました。

中村さん

先輩たちの建築甲子園のプランが採用され、自分たちまで受け継がれてきたことが凄いことだと思います。1〜2年生の時からすごい事業だとは聞いていましたが、ワークショップが始まっても最初は全然実感がなくて…理解していないまま、とりあえず取り組んでいました(笑)。ただ、製作が始まってからは「やる気スイッチ」が入りました!

体内に「やる気スイッチ」を持つ中村さん

藤井先生

昨年の3年生のワークショップ中間発表に、後輩(現3年生)たちが数名見に来ていました。中村さんはその数少ない一人だったんですけど、その時はまだ気持ちが入っていなかったんだね…(笑)。

2016/2017年建築甲子園の優勝監督であり、ワークショップを牽引する藤井先生

北野さん

高校生(先輩)が考えたプランが「実際に建物になる」ということは本当にすごい事だと思いますし、自分たちが参加出来ることも凄く良い経験でした。私たちの学年は、コロナで行事やイベントが少なかったので、みんなでモノをつくること、「これが青春?」みたいな感じでした(笑)。

ラボ

ワークショップによってみんなとの絆が深まったんですね!

北野さん

同じクラスでも話したことない人がいたんですけど、ものづくりをしていると、いろんな人と話す機会も増えて、みんなと仲良くなれたかな?って思います(笑)。

ものづくりを通して成長する高校時代。光り輝いています

ラボ

富山工業高校さんのインスタグラムで、製作発表会(2月4日)の設営の様子がアップされていて、皆さんが楽しそうに準備されているのを見ました!

ラボ

そんなワークショップですが、苦労したことや学びがあったことを教えてください。

小林さん

前期の「結」は、背面と座面の糸を巻くのが本当に大変で…。先生に「もう帰るぞ!」と言われるまで、夜の8時頃まで学校に残って製作に取り組んでいました。この作業でみんなとの絆が深まったと思います。

グラフィックは、創業支援センターのカフェの壁面に描くデザインについてみんなで意見を出し合い、どちらの案が良いかを決める時がありました。普段から凄く仲良い友達と意見が対立してしまったんですけど、そこはお互い熱い想いをぶつけ合いました!あの時は楽しかったですね。

昨年末に開かれたワークショップ。壁面デザインについて本気で意見を出し合う3年生

3年生が考えに考えて辿り着いたデザインたち

中村さん

「結」は、編んでも編んでも終わらなくて…毎日ずっと同じ作業ばっかりで(泣)。照明「Ori」も完成形になるまで、上手くいっては失敗しての繰り返しで試行錯誤の連続でした。考えるのが大変でしたけど、最終的には上手くいって、沢山の人に褒めてもらえて嬉しかったです。

ラボ

「結」は小林さんも言っていましたけど、本当に大変だったですね…!「Ori」のどんなところが大変だったんですか?

中村さん

しけ絹の素材感を残しながら、アイロンのかけるタイミングだったり。みんなで考えて何回もトライしました。

北野さん

私は前期も後期もそこまで大変だったと思っていなくて…(笑)。椅子を製作しているみんなよりも先に帰っていたりしてたので。でも、照明「紙風船」の時は、みんなの意見を一つにまとめ、みんなが納得する案に絞り込む大変さを経験しました。完成して照明を取り付ける時は、もの凄い達成感でした!

照明チームは12人いたので最初は3〜4案ありましたが、中間発表で2案に絞り、デザイナーの岡安泉さんにも見てもらったりして、最終的に一つの案に決まったんですけど、私が推していた案は選ばれませんでした。内心悔しかったんですけど、それはそれで気持ちを切り替えて「頑張ろう!」って思えたし、結果的にイイものが作れたので良かったです。

嬉しいことも悔しいことも辛いことも、ギュウギュウに詰まったワークショップ

ラボ

皆さんの製作に対する想い、ワークショップに対する想いがひしひしと伝わってきます!

小林さん

お客さんが訪れる場所(カフェ)に、自分たちの考えたグラフィックデザインが描かれるわけですけど、自分たちが「こうしたい」の自分本意ではダメで、場所に馴染むものであったり、利用する人に喜んでもらえたりすることをみんなで考え抜きました。最終的に数ある案が上手くまとまっていったのではないかと思います!

小林さん、熱いっす!春からは富山市の総合建設会社で現場のお仕事に

中村さん

お客さんは、カフェにお茶や食事を目的に来られるので、私たちが作った照明や家具を見に来られるわけではないと思います。それでも、「この照明、素敵だね」と存在感が出るようにしたかったですし、照明だけでなく椅子やテーブル、グラフィックとのバランスや調和を考えながら、「どんな感じになるのかな」とイメージしながら作りました。

春からは富山市の塗装工事会社に就職。塗装女子に!

小林さん

ワークショップのなかで、デザイナーの方々からそれぞれの製作物の兼ね合いについてアドバイスをいただきました。それからは、「今こんな感じだけど、そっちはどう?」って言いながら、お互いの進捗を情報共有するようにしました。

北野さん

製作が始まったばかりの頃は、自分たちが納得するものをひたむきに作っていたんですけど、中間発表でデザイナーの方々のアドバイスもあって、「利用する人に見てもらう、使ってもらう」ことを意識するように思考が変わっていったように思います。自分の推した案が落ちたことは、少なからずともショックでしたけど…誰かにイイと思ってもらえるためなら、使う人のためになるのならと、すぐに切り替えました!

オダケホームの家づくり設計コンペで、高校生唯一の上位入賞を果たした北野さん。春からは富山市の建築設計事務所に就職!

〜前編おわり〜

後編は、高校生活の思い出、ワークショップで印象深いデザイナーさんや先生の言葉、建設業界での目標などをお送りします!