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連載記事

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わかもん

富山工業高校生のプランが基になり、全国に先駆けて整備される職住一体の施設「SCOP TOYAMA」(富山県創業支援センター / 創業・移住促進住宅)が今年秋にオープンします。「わかもん〜高校生のプランが現実に〜」は、「建築家 仲俊治✖️富山工業高校教諭 藤井和弥✖️とやま建設ラボ」の3者によって、この施設の完成までを綴るコラム連載です。

※隔週火曜日に公開

富山工業高校建築工学科科長

藤井(ふじい) 和弥(かずや)


「ひらけ!富山」

最後の仕上げ

9月下旬、現役の高校3年生たちとワークショップで製作したアイテムをSCOP TOYAMAに搬入してきました。悪天候が心配されましたが、気持ちの良い快晴です。

僕はというと、ワクワクと緊張が入り混じった変なテンションで、これまでのことが色々思い出されてしまい、学校出発前から泣きそうになっていました。

先輩たちの作った椅子やテーブル、照明。落としたりぶつけたりして壊さないよう慎重に、自分たちで塗装した壁面グラフィックのあるカフェに運び込みました。

コモンアーケード側から慎重に運び込む

仲さんも立ち会ってくださり一緒に作業

テーブルのアジャスターを調整して高さを揃える

しけ絹のシェードも最終調整

イベントスペースの紙風船ランプも設置。複雑な配線は絡まないように考えながら

圧巻の紙風船ランプたち

コモンテラスの軒下ベンチも居心地良い

完成したカフェ空間。藤森アトリエによる壁際のベンチ以外は、すべて高校生によるもの

 

高校生製作のアイテムが入ったカフェの空間、とても素敵になりました。今回手伝ってくれた生徒はスマホで写真を撮りまくっていたので、そのうち“バエる“スポットにもなりそう。

たくさんのお客さんで溢れてくれるといいなぁ。もちろんOBOGにもたくさん来て見てもらいたい。

「高校生のわりによく頑張ったね」というレベルはとうに超えていて、手前味噌ですが本当にかっこいい空間です。アイテム一つ一つのクオリティが高く、もちろんそれはデザイナーの皆さんの導きがあっての事なんですが、僕たち教員もこれまで生徒と一緒になって悩んだり手を動かしたりを繰り返してきたので、トータルで出来上がった空間を見てみんなニヤニヤが止まりませんでした。

そして僕は感動してまた泣きそうでした(しつこい)。

それに仲さんやスタッフの滝沢さん、創業ベンチャー課の野村さんたちが本当に喜んでくださっていて、その姿に教員も生徒も嬉しさが倍増しました。

富山工業高校関係者全員の愛着が半端ないので、みんなでこれからも末永く関わっていけたらなぁと思っています。

仲さんもの笑顔に先生も生徒もテンションが上がる

 

再び原点を振り返る

2019年、プロポの全案を高校生たちにも見てもらう会を実施。高校生たちの意見も取り入れながら審査に臨んだ

今から3年前、建築甲子園優勝から事業化決定という流れの中で、設計者を選定するためのプロポーザルの審査員を務めさせてもらえることになりました。僕のような一教員でも、この事業にちゃんと意見することが出来る・受け入れてもらえる、富山県のその心意気がとても嬉しかったです。

だからこそ、「富山を代表するような、全国に誇れる建築物にしたい」。その一心でプロポの審査に臨みました。

こんな事業はまたとない貴重な機会、絶対に後悔したくない、成功させたい。審査の場では心臓バクバクでしたが、生意気だなんだと思われようと、忖度せずに自分の意見をぶつけていきました。

そしてその結果、設計者も指定管理者も、県外の方々が選ばれることになりました。

仲さんの提案にある、縦糸と横糸を編み重ねる「セミラティス化」という設計手法が、閉じていないデザイン、あたらしくてかっこいい開かれたデザインとして、プロジェクトの成功には欠かせない大きな評価のポイントになったのです。

シェアハウスにしても創業支援施設にしても、富山にとってはとても可能性のある試みですが、それらがその内側だけで閉じてしまうと、一つの施設として「内輪感」や「ちょっとダサい箱モノ」になってしまい、プロジェクトそのものがそこで終わってしまいます。

さらに「移住」という文脈があって、県外にもオープンになった経緯を踏まえると、これまでの富山にない「フレッシュな視点」、移住してくる地域=「大都市部の視点」で空間づくりすべきです。

そのため、縦糸と横糸により、職と住を丁寧に結び付け、有機的で多様な暮らし方や働き方ができる回遊性に富んだプランとすること。そして3棟のデザインが統合され、エリア全体として洗練された新しい雰囲気をキープしていくこと。

これらは今後施設が運営されていく上で、プロジェクトがテーマから外れていかないためにも、非常に重要なデザインの話なのです。

元になった建築甲子園のプランも、「富山って微妙」と当時の高校生らが思ったところから生み出されたわけですから、スタイリッシュなライフスタイルが描けるという視点も大切といえるでしょう。

もう間も無くバトンが運営側に渡りますが、 “外からどう見られるか”という高い意識を持って、設計チームの目指してきたものをしっかりと引き継いでほしい。プロポーザルの審査員という立場からもそれを切に願っています。

 

建築の仕事とわかもん

2017年の建築甲子園全国優勝からは5年が経過しようとしています。あの時の生徒たちは大学を卒業し、いつのまにか社会人。僕もいつのまにか40代に突入し、5年前まで普通に穿けたはずのズボンも入らなくなっていました。月日が経つのは本当に早いと実感します。

現状の団地の記録を残すために開催したフォトコンテスト(2020年)

フォトコンテストでの生徒作品(2020年)

特に卒業生らの成長の早さには、会うたびに驚かされます。

たまにフラッと学校へ遊びに来てくれたりしますが、本当に話し方や振る舞いまで立派になっていて、自信に満ちた表情をしているのです。こういう姿を見ると建築の仕事っていいなぁって思います。

出来上がった貫通路の見学(2022年) 熱く語ってくれたのは冨工OBの中島くん(林建設)

 

カタチあるもの、世に残るものをつくること。

人や社会の役に立つこと、たくさんの人を感動させることなどなど。

物理的に見える建築の仕事の魅力というのは、数え上げればキリがありません。

でも一人の人間として建築の仕事を見たとき、“日々成長する喜びを感じられる”ところが建築の魅力なんじゃないかと思うのです。

1週間前まで分からなかったことが 分かるようになる。1か月前まで出来なかったことが出来るようになる。1年前まではやりたくなかったけど、今はやってみようと思える。

名刺の名前の横には取得した資格が追加され、いろいろな知り合いや仲間が自分の周りに増えてくる。こういう経験というのは、あまり他の仕事では得られない、建築ならではのものな気がします。

「建築っていい仕事だなぁ」

蓮町のプロジェクトを通じて、やっぱり僕はそう確信しています。これからもたくさんの若者が建築業界へ旅立っていくところを見届けていきたい。一緒に建築業界を、富山を、盛り上げていきましょう!!

 

さいごに

ようやく10回分のコラムが今回でラストとなりました。書けない書けないと毎回ぼやきながらここまで来ましたが、蓋を開けてみるとトータルの文字数カウントではダントツのトップ(笑)。

最早コラムとは言えないような長々と読みにくい文章?記録?でしたが、こんな機会でもいただかないとこの数年に渡る活動を文字として残すなんてこと、僕のような鈍物には難しかったと思います。

ですから、とやま建設ラボさんには深く感謝しております。また、読んでいただいた皆さんも本当にありがとうございました。

1回だけですがMPVが獲れて嬉しかった!!これからもSCOP TOYAMAの応援、よろしくお願いします!!!

藤井和弥

PROFILE

富山工業高校

藤井和弥

富山工業高校建築工学科科長
1982年生まれ。富山県高岡市出身。
2016年・2017年に出場した建築甲子園で、同校の監督として2連覇に導く。
2017年の優勝作品「夢を描きながら住まうこと〜地域を創るわかもん団地〜」は、富山市蓮町の県営住宅を改修して行う「創業支援施設・U I Jターン者等住居事業」として実現する。2022年春に完成する予定。
横山天心氏との共同設計「街のヴォイドに開く町屋」は、2020年度グッドデザイン賞を受賞
IDA(INTERNATIONAL)DESIGN AWARD 2020(アメリカ・ロサンゼルス)銅賞 受賞
第32回(2021年度) 北陸建築文化賞受賞

富山工業高校建築工学科 Instagram
https://www.instagram.com/tomikoarchitects/