創建築事務所 高畑純✖️徳田孝宏「0→1の経験」
地域社会の発展に貢献した優秀な建築作品を表彰し、富山県内の建築賞で最も歴史がある『富山県建築文化賞』。
52回を迎えた栄えある賞を見事受賞された方々に、インタビューを敢行！
今回は「一般部門」入選の「Domaine Beau」（ドメーヌ・ボー）の設計をご担当された創建築事務所（高岡市野村）の高畑純さんと徳田孝宏さんにお話を伺ってきました！
南砺市のワイナリー「Domaine Beau」（ドメーヌ・ボー）
| 第52回富山県建築文化賞 一般部門 | |
|---|---|
| 入選 | 「Domaine Beau」 |
| 所在地 | 富山県南砺市立野原1197 |
| 敷地面積 | 6224.16㎡ |
| 延べ面積 | 794.01㎡ |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造・平屋建て |
| 竣工 | 2020年2月 |
| 建築主 | トレボー |
| 設計 | 創建築事務所 |
| 施工 | スター総合建設 |
ラボ
この度は入選おめでとうございます！南砺市立野原の自然豊かな丘陵地にワイナリー「Domaine Beau」の設計を担当されることになった「きっかけ」から教えてください。
高畑さん
建築主であるトレボーの中山安治社長から、「南砺市に美しいワイナリーを作りたい」という熱い想いをお聞きし、私たちもその想いに共感しました。景観を生かして、いかに「立野原という丘陵地にランドマークを作るか」。このテーマでプロジェクトはスタートしました。
創建築事務所でDESIGN主任を務める高畑さん
ラボ
田畑の緑の中に、ワインカラーのファサードがひときわ目を引く、文字通りランドマークにふさわしい建物になっていますね。
建物に隣接してぶどう畑が広がる広大な敷地
エントランス外観
高畑さん
ありがとうございます。このワインカラーの赤い外壁は、富山の伝統産業であるアルミと鋳物の技術を生かしたものにしました。県道から90m離れた5mほどの高低差がある丘陵地なので、視認性をどう確保すれば良いのかと、様々なことに配慮した結果、とても良い建築に仕上がったと感じています。
徳田さん
最終的にこの色に決まったのは、ワインの色というだけではなく、景観と調和するために落ち着きがあって高級感もある、このマタドールレッドがイメージ通りだったんです。この地区は紅葉もきれいで、その中でも映えるような色を考えながら作りました。
創建築事務所で様々な設計を担当する徳田さん
ラボ
ワインの色だけでなく、景観にも配慮した色に決められたんですね。
徳田さん
プレゼン材料として用意したものがこれだけあります。元々、素地の色はアルミ色なんですが、この凹凸のある柄に決まってから、色だけで10種類以上のものを提案しました。色の方向性が決まったら、よりイメージに近づけるために3分艶、5分艶と光沢の加減を調整し、最終的に鉄粉も調合してイメージ通りの完成品が仕上がりました。
色違いでこれだけの数を提案…！
施設内へのアプローチ
高畑さん
この凹凸は、「ちょうな彫り」という手法で、ワイン樽の木の感じや南砺市井波の彫刻をイメージして作りました。ボコボコしているため、近づくにつれて、光の加減で表情が変わるのも面白いと思っています。ランドマークとして成立させるために、ボリュームの大きさを生かしファサードとして全面に見せました。
ワイン樽
ラボ
建物のつくりでこだわったポイントを教えてください！
徳田さん
設計に関しては、働く人やお買い物に来る方のことを考えて、いかに「面積を大きくせずに、シンプルな動線にするか」がテーマでした。200枚以上のスケッチを書いて、結果的に今のシンプルな形に落ち着きました。最初の打ち合わせから約1年半ほどかけて、プランを固めていきましたね。
高畑さん
小高い丘陵地なので、天気の良い日は富山湾や新湊大橋、二上山などが眺望できます。物販のスペースに関しては、開放的な空間としてその眺めを楽しんでもらうようにしました。
物販スペースでありながら、イベントなども開催できる
絶対に気持ちいいじゃないですか、この景色
徳田さん
昨年12月には収穫祭を開催してキッチンカーを呼んだり、地域の方に向けたイベントができるスペースも視野に入れた設計を。室内の廊下が広くとってあるのもそういう視点からです。
ラボ
過疎化が進む地域の活性化にもつながりそうですね！
高畑さん
立野原の500haの耕作放棄地を防ぎつつ、ワインを通して地域に恩返しすることが建築主である中山さんの考えでした。ワインを売るだけではなく、イベントを催したり、いつ来ても工場内の雰囲気を体感してもらえる開放的なつくりを心がけました。来た人が楽しんで帰ってもらえるように。ベンチ越しののぞき窓から醸造タンクが見える映えスポット的な場所等もあります（笑）。
設計から監理まで。当時の事を楽しそうに語るお二人
のぞき窓棚。作業室のワイン醸造タンクや作業風景が覗けちゃう
醸造のタンクが並ぶ作業室
ラボ
改めて受賞のご感想を聞かせてください。
高畑さん
私自身、この賞の受賞は3回目になりますが、これまではJV（企業共同体）であったり、他の設計事務所とタッグを組んだものだったので、単独で取らせていただいたのは今回が初めて。とても嬉しく思います。
前回受賞した「道の駅 雨晴」（第50回富山県建築文化賞一般部門で優秀賞）は、海の景観を生かしたものでしたが、今回は山との調和がテーマ。富山県建築賞は第49回から「建築文化賞」に名称が変わり、富山の景観や地域色をより生かした建築に重きを置いてもらっているように感じています。
徳田さん
私は初めての受賞なのでとても光栄に思います。この建物を通して沢山の経験をしました。そもそもワインをあまり飲まなかった私が、自宅で葡萄を20品種栽培するほど好きになりましたし（笑）。
ドメーヌ・ボーのワイン
中山さんも私たちも、ワイナリーを作るのは初めてで、「0を1」にする経験をさせていただきました。中山さんの座右の銘である「情熱は伝播する」の言葉通り、溢れんばかりの情熱が私たちを育ててくれて、また、南砺市や富山県ともすごく良い協力関係が築くことができました。それが建築文化賞に繋がり、とてもありがたく感慨深いものがあります。
中央が中山さん。熱烈なワイン好きで車の色も「ワインレッド」だとか！
高畑さん
ワイナリーは、今ようやくスタートラインに立ったばかり。中山さんは、“立野原コート・ドール（黄金の丘）構想”を掲げて、葡萄も果樹も、世界に発信できるような一大産地になることを目指していらっしゃいます。
チーズ工房やパン屋さんを誘致したり、グランピングのスポットも作ったり。夢はまだまだ続くので、これからが本当に楽しみです！
| 「Domaine Beau」施工業者の皆さま | |
|---|---|
| 醸造機器工事 | マザーバインズ |
| 厨房機器工事 | ホシザキ北信越高岡営業所 |
| 仮設工事 | OPTION’92 |
| 地業工事 | 富士コンテクノ（株） |
| 土工事 | （有）浦山重機 |
| コンクリート工事 | （株）拓友 |
| コンクリート工事（生コン納入） | （株）北翔 |
| 鉄筋工事 | （株）山口鉄筋工業 |
| 型枠工事 | （有）一榮建設 |
| 防水工事 | 石動コーキング（株） |
| タイル工事 | （有）結城タイル |
| 木工事 | タカハタ工業（株） |
| 木製建具工事 | 神谷木工（有） |
| 屋根・樋工事 | （株）竹鼻工業 |
| 外装工事 | 北陸アルミニウム（株） |
| 金属工事 | 河上金物（株） |
| 左官工事 | （有）伊藤左官工業所 |
| 左官工事 | 東邦レオ（株） |
| 鋼製建具工事 | 河上金物（株） |
| 硝子工事 | 堀江硝子（株） |
| 塗装工事 | （株）第一興産 |
| 塗装工事 | （有）エス・ティー美装 |
| 内装工事（LGS・ボード） | 第一交易（株） |
| 内装工事（仕上） | 第一交易（株） |
| 家具工事 | （株）米三 |
| 雑工事 | （株）コマヤ |
| 付帯工事 | （株）拓友 |
| 電気設備工事 | （株）開進堂 |
| 機械設備工事 | ゼオンノース（株） |
「Domaine Beau」（ドメーヌ・ボー）撮影：dot DUCK