連載記事
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第5弾のテーマは「建築設計の楽しさ」です。
※毎週火曜日に掲載

三四五建築研究所
テーマ vol.41建築設計の楽しさ
「未知との出会い」
ケンチクノワ2もあっという間に最終回となりました。
このリレーブログでは、手掛ける建築や経歴の異なる多様な設計者でバトンをつないでいきました。同じテーマでも、他の建築家は視点の異なる素晴らしい記事で、私自身、毎週たくさんの学びを与えて頂きました。最後まで他の方々の記事が楽しみですね。
最終回のテーマは「建築設計の楽しさ」についてです。
日々私達が行っている建築をつくるという行為は、いうなれば「難攻不落の険しい山へのアタック」という様相です。頂上まで登り詰めた時の瞬間的な達成感はもちろんあるけれど、その道中で偶然出会う仲間や素晴らしい景色、それら未知との出会いをいかにエンジョイするかが醍醐味です。
~モノとの出会い~
初めて体験する空間、理念から導いた鮮やかな回答、同人誌的なマニアックなディテールワークなど、ワクワクする建築やデザインに出会い、その感動を源泉にモノを生み出すということは設計者のベースとしての喜びです。

フラットバーで外周部を組んだ鳥籠構造で無柱空間を実現したレイカズン本社ビル。構造理念を形にする事に長けた建築家の下で設計を学び始めました

安藤忠雄さん設計の「光の教会」。学生の時に訪れて、研ぎ澄まされた空間性にただただ圧倒されました

OMA設計「シアトル中央図書館」。プログラムと構成が鮮やかに建築化された建物は初めての空間体験に溢れていました
~人との出会い~
共に難関に立ち向かう設計チームのおかげで、一人では到底できない建築にたどり着きます。情熱に溢れる現場の方々や視座の高い施主との出会いは、限界まで考え抜く厳しさを常に教えられます。

富山県立大学中央棟を中心としたキャンパス再編計画。初めて他設計事務所(本リレーブログでもご一緒している福見建築設計事務所の高橋さん達)との共同設計で、新たな設計プロセスを経験しました。長い工事期間中もゼネコンの方々から沢山の事を吸収させてもらいました

現在進行中の学校プロジェクトでのワークショップ風景。公共建築をつくる際の「使い手が見えない問題」の解決への糸口として、利用者の本音や期待感を直接聞き取ることができます
~コトとの出会い~
「建築自体を目標にするのではなく、建築を通して人や社会とコンタクトする」という、私が大切にしているケンチク理念を日々実践しながら拡張していこうという思いがあります。その思いに導かれるように、たくさんのモノや人や考え方に出会ってきました。その出会いから、また新たな思考が生まれます。

様々な出会いの中で自分だけでは辿り着けない考え方が生まれます。モノをつくるだけでなく、建築と社会を取り巻く多様な要因を考える枠組みがケンチク思考です
正解のないことへチャレンジすることを楽しめるか、「未知との出会い」への自分の関心や好奇心を維持することが大切です。
険しい登山で自分の限界を乗り越える喜びを手に入れるように、建築活動でのたくさんの未知との出会いを経て、一歩ずつ「建築」を自分の手の内に入れていく。それが私にとっての建築設計の楽しさではないかと思います。
私が恩師から教わった最も大切なことの一つは、「何事も楽しむ姿勢」でした。建築設計は困難な事も沢山ありますが、それも含めて楽しめる仕事だと思います。
皆さんも是非、建築への扉を開いて、「自分だけの楽しむ」を追求してみて下さい。