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連載記事

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ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第4弾のテーマは「建築と都市 ~周辺環境との関係性~」です。

※毎週火曜日に掲載

三四五建築研究所

淺井(あさい)純平(じゅんぺい)


テーマ vol.04建築と都市
       ~周辺環境との関係性~

「つながりを生む関係性のデザイン」

 前回のテーマ「基本構想が生まれるまで」、各設計者の創造の源泉が垣間見えて、とても勉強になりました。

先日ラジオの中で、あるミュージシャンが楽曲制作にまつわる話をしていました。「クリエイティブに終わりは無く、満足することはない。制作の終わり=締め切りというだけで、満足して完成を迎えることはない」という内容でした。各々設計者のプロセスこそ違えど、終わりなく考え続ける事こそが創造の醍醐味だと思いました。

さて、今回のテーマは「建築と都市」です。そのテーマを抽象化して読み解いてみると、「建物と周辺環境の関係性のつくり方」とでも言えましょうか。

古い本ですが、今回のテーマにふさわしい良書がありました。芦原義信著“外部空間の設計”です。スケール、テクスチャ、外部空間のヒエラルキー、都市性など、様々な論点を切り口に、建築単体ではなく、関係性によって生まれる空間の在り方、つまり関係性のデザインについて書かれています。

50年以上前に出版された本だが、現代でもたくさんの示唆に富む

「関係性のデザイン」は私にとっても重要なテーマです。今回はいくつかのプロジェクトを通じて、テーマの深ぼりをしてみたいと思います。

まずは、富山市内中心部での住宅計画です。

大きな区画割で形成された落ち着いた住宅街の中、三方を住宅に囲まれた環境でした。L型の建物ボリュームで敷地を切り取り、周辺住宅との間に出来た余白を大きな中庭空間としました。私的な空間である中庭とパブリックな街並みが抜けのあるピロティを通じてつながりの関係性をつくる計画です。

環境読解図。計画建物と周辺住宅との余白部分が中庭空間となる

ピロティを通してパブリック空間とつながる

プライベート/パブリックの中間領域となる中庭

続いても住宅の計画です。

小矢部市内、旧北陸街道に面し、黒瓦屋根が立ち並ぶ伝統的な美しい街並みに建ちます。代々受け継がれた邸宅の歴史継承をコンセプトに、街並みとのデザインコード統一や歴史ある庭と敷地を超えた景観への接続など、環境と歴史へのつながりが重要なテーマとなったプロジェクトです。

継承された庭との関係性を中心に計画された配置

開口部で縁どり、外部空間とのつながりをデザイン

最後は魚津市内の銀行店舗です。

住宅や商業施設、文教施設が混在して建つエリアの中にあります。店舗にありがちな、大きなハコモノと自己主張の強いサインで構成するのではなく、分割してセットバックしたボリュームとスケールダウンを図るための水平ラインを強調したキャノピーで、住宅地を含めた周辺環境との関係性を調整しています。地域とのつながりを大切にする銀行の在り方を体現したプロジェクトです。

計画当初の鳥瞰パース。住宅地に対して、セットバックボリュームとキャノピーで関係を調整している

キャノピーは雁木歩廊や駐車場の機能をもつ

社会背景に左右されて建築家の関心は時代によって変遷していきます。「モノのデザイン」から始まり、「コトのデザイン」に変わり、現代は「関係性のデザイン」を考えることが大切です。

私自身、いくつかのプロジェクトを改めて振り返ってみると、普段から大切に考えている関係性のデザインは、「様々な環境や関係をいかにつないでいくか?」であることに気づきました。これは初回でも書いた建築を通して人や社会と向き合うケンチク理念につながります。

モノを考えるだけではなく、丁寧に関係性を読み込んだデザインで、より豊かな街並み形成を今後も考えていきたいですね。

淺井純平

PROFILE

株式会社三四五建築研究所

富山市新桜町8-1
http://www.miyoi.co.jp/

淺井純平

経歴
1982年 大阪府生まれ
2005年 富山大学教育学部人間環境専攻 卒業
2007年 大阪工業技術専門学校建築学科Ⅱ部(夜間)卒業
2007~2010年 照井信三建築研究所
2010年~ 三四五建築研究所 

一級建築士
設備設計一級建築士

三四五建築研究所での主な担当作
「富山県立大学中央棟」
「富山県立大学DX教育研究センター」
「高岡駅前東地区複合ビル(ソラエ高岡)」
「北陸労働金庫魚津支店」
「富山市立上滝中学校」ほか。