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連載記事

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ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第3弾のテーマは「基本構想が生まれるまで〜アイデアとの出会い~」です。

※毎週火曜日に掲載

コラレアルチザンジャパン

山川(やまかわ)智嗣(ともつぐ)


テーマ vol.03基本構想が生まれるまで
       ~アイデアとの出会い~

「建築のまわり」

第3回目まできました。ここから読み始める方はぜひ第1回からお読みいただければ嬉しいです。

今回は建築の基本構想がどう生まれてくるのか、引き続き「建築と自分」をテーマに思い出しつつも、この着想はこの経験が起因しているのではないかという自己分析も踏まえながら書いていこうと思います。

激動の上海派遣(左遷?)を経験し、無事日本に帰国、大学に復学したものの半年間のエキサイティングな経験が忘れられず、いつかは上海に戻りたいとの想いが日々強くなっていきました。

将来は建築を生業にしていきたいとの気持ちがより高まったこともあり、学びに没頭。大学の卒業設計(一般的には論文ですが建築学科は設計なのです)では最優秀賞の堀口捨己賞をいただきました。

その頃からでしょうか、建築にまつわる経済、経営、政治等のいわゆる「建築のまわり」に興味を持ち始めました。なぜなら、大学の建築学科では設計の手法や知識、歴史や環境は学べるけれども、その建築がもたらす社会的、経済的な影響までは学ぶ機会がありません。

時には何十億円ものお金が動く建築という業界にもかかわらず、大学ではその経済感覚がないまま若者が社会に輩出されていくことに疑問を持っていました。

そんなモヤモヤした想いのなか出会ったのが、大江匡という建築家が率いるプランテック総合計画事務所という設計事務所でした。当時、一般的な建築家事務所(アトリエ系ともいいます)は、所員が数人から十数人という規模が殆ど。

しかしプランテックは所員150名以上も在籍し、大江さんの経営手腕でデジタル技術を使った設計業務改革や、一般的な建築家が見向きもしなかった工場等の生産の現場にデザインという概念を持ち込み、工場を一般に開放していく、今でいう「産業観光」の礎を築いていました。

特に「あいつは建築家じゃなくて事業家だ」と建築家の先生方から揶揄されていた(嫌われていた?笑)のを聞いて、むしろすごく興味が湧き、就職氷河期ではありましたがなんとか滑り込みで入所させていただくことができました。

今でこそ建築家が建築という枠を飛び越えて様々な事業を行うことがポジティブに社会に受け入れられていますが、大江さんはその先駆けだったと思います。

プランテック総合計画事務所での担当プロジェクト:柏高島屋ステーションモール

先ほど「建築のまわり」と表現しましたが、これは今でも建築のアイディアの着想する際に大事にしているキーワードだと思います。

初回でもお話ししましたが、コラレアルチザンジャパンは「お抱え職人文化を再興する」というビジョンを掲げています。これは建築のまわりで起きていることを建築というツールを活用して解決・発展させていくという考え方に基づいています。

ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と表現しましたが、寝食だけでなく、労働や芸術、学習や治療まで、暮らしに関わる様々な活動を内包するのが建築であり、その建築がもたらす影響は集落やまち全体まで及びます。時には社会全体に経済的文化的な影響を与えることも多々あり、建築はメディアのような役割を果たすことがあります。

世界最“狭”広場をコンセプトにした町のさまざまな活動を受け入れる全天候型公共空間:HAIZ GATE

実際に大江さんは、単純に美しい建築をつくるのではなく、その役割や社会に与える影響、業界の発展や働き手の社会的地位の向上等、一見すると建築設計と全く関係のない分野まで知見を広げ分析・考察していくことで工場建築を「暮らし」とより近いものに変えていきました。

これは「建築のまわり」を理解していないと実現できないことです。もちろん、そこにはデザインという触媒が働いていることは言うまでもありません。そのような経験からか、私も新たな案件をいただいた時には、すぐにスケッチをしたり設計図面の作成に取り掛かったりすることはありません。

もしそれがお店だとしたら、そこで販売しているものは何なのか、どのような人が使っているのか、どのように生産されているのか、どのような物流システムで運ばれてくるのか、その素材はどこから来るのか…と多くの事柄に関心を持って情報を収集し、自らが経営する感覚で全体の構想を考えていきます。

仕事が始まっても、まったく手を動かしていないので、いつも周りのスタッフには締め切りが近づく度にハラハラさせています笑。

コラレでは建築だけでなくそこでの活動に関わる全てのアプリケーションをトータルでデザインしている:AGARI

次回は「建築と都市」について、私たちが運営しているBed and Craftという宿泊施設を例にあげなら(と同時に勝手に私の過去も振り返りながら笑)、考察していこうかと思っていますが、もしかしたら気が変わるかもなのでご容赦ください。

3回目まで読んでいただいたあなたは大変奇特な方だとお見受けしますが、ぜひ全5回までついてきて下さいね。

ではまた!

山川智嗣

PROFILE

株式会社コラレアルチザンジャパン

本社
富山県南砺市本町3丁目41
アジアオフィス
上海市杨浦区大连路990 号海上海大厦10 号楼1303 室
HP:https://corare.net/

山川智嗣

建築家
コラレアルチザンジャパン代表取締役
一般社団法人ジソウラボ理事


富山県生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。日本一の木彫刻のまち富山県南砺市井波にて「お抱え職人文化を再興する」をコンセプトに、ものづくり職人と新たな価値を創造するクリエイティブ集団・コラレアルチザンジャパンを運営。

日本初の職人に弟子入りできる宿「Bed and Craft」をプロデュースするなどクリエイティブディレクターとしても活躍している。ジャパンツーリズムアワード観光庁長官賞、グッドデザイン賞(岩佐十良審査員特別賞)、東京メトロ銀座線駅デザインコンペティション優秀賞等、受賞歴多数。

HP:https://corare.net/
Instagram:https://www.instagram.com/tomotsugu_yamakawa/