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連載記事

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ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第3弾のテーマは「基本構想が生まれるまで〜アイデアとの出会い~」です。

※毎週火曜日に掲載

福見建築設計事務所

高橋(たかはし)航平(こうへい)


テーマ vol.03基本構想が生まれるまで
       ~アイデアとの出会い~

「体験から生まれるアイデア」

体験から得た感覚とそれを分析してモノにした知識、その積み重ねがアイデアを生みだす有効な手段だと思っています。私がアイデアと出会う時は、大きく分けると2つの体験からきています。

一つは、『計画敷地』を体験することです。

その土地がもつポテンシャルを見極めるために、敷地の形状や高低差、隣接する敷地や道路の様子、それに対する周辺の景観や風景、光や風の自然環境などを読み解いていきます。

今の時代はインターネットで敷地の周りを歩いているかのように見て回ることもできてしまいますが、実際に体験しなければ得ることのできない情報がそこには多く存在しています。改築や増築等の設計の際には、1日中現地を見て回って人の動線や活動の様子、環境の移り変わりなども感じます。そうすることで自ずと答えが見えてくる事柄もあります。

二つ目は、『建築空間』の体験です。

最適なアイデアに辿り着くためには特に重要な要素で、敷地を読み解くことや施主の要望、諸条件が揃えば、ある程度合理的なプランをつくることは可能だと思っていますが、それが機能的かつ魅力ある建築になるかは別です。そこに空間を豊かにするエッセンスを加えるためのアイデアを常日頃から蓄積しておくこと、そのために様々な『建築空間』を体験するようにしています。

ニューヨーク近代美術館(MOMA)

谷口吉生設計のニューヨークの街並みにも調和したシャープで洗練されたデザイン

ダイナミックな吹抜け空間と極力ラインを消し去り細部にこだわりつくしたディテールが非常に美しい

 

キンベル美術館

ルイス・カーンの代表作でサイクロイド状のヴォールトの連なりによって構成されている外観

ヴォールト屋根の中央にスリットが設けられており、その下のアルミパンチングメタルに反射し、自然光を取り入れる。ヴォールト天井はコンクリートだが、差し込む光が柔らかく軽やか印象を受ける

 

ルイス・バラガン邸

ルイス・バラガンの自邸&スタジオ。ピンクやオレンジ等のカラフルな色使いと自然光が生み出す陰影が美しい。ビビットなカラーを使いながらも静寂の空気感が醸し出されている

安藤忠雄さんもインスパイアを受けたと言われる十字を描いた美しい大開口サッシ。緑あふれる庭園との融和が心地良い空間

 

サクラダファミリア

アントニ・ガウディ設計の言わずと知れた未完の聖堂。観光名所の定番ではあるが、自然の造形を意識した曲線と装飾を多用したデザインと自然的な構造を実現するための独自の構造力学で作り上げた圧巻のファサード

聖堂内部は、自然を愛したガウディのデザインをまさに表現し、ステンドグラスから差し込む光の美しさや、樹木に見立てた柱のある大空間は、圧巻の空間構成となっている

 

建築雑誌の中の切り抜かれた写真だけでは伝えきれない、生の空気感や環境、細部の洗練されたディテールがそこにはあり、その空間を体験しないと決して感じ取れないモノです。

素敵な建築に出会った時には、いつも体が震える感覚があります。そして、とても心地よくワクワクした感情を覚えます。こうした建築は、空間のバランスや光の取り入れ方など全てが計算されつくされています。

様々な建築デザイン、空間、ディテールを体験し、感じ、それについて考えることで私の体の中にまた一つアイデアを生み出す種ができるのだと思います。

高橋航平

PROFILE

株式会社福見建築設計事務所

富山市弥生町2丁目1-1
https://www.fukumi-aa.co.jp

高橋航平

1985年 富山市生まれ
2004年 富山大学教育学部中退
2009年 金沢工業大学建築学部建築学科卒業
2009年~株式会社福見建築設計事務所

一級建築士
設備一級建築士
建築積算士

設計担当
富山県立中部高等学校
富山県立大学中央棟
福見建築設計事務所社屋
富山県防災危機管理センター ほか