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連載記事

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ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。

※毎週火曜日に掲載

鈴木一級建築士事務所

三井(みつい) 峰志(たかし)


テーマ vol.01建築設計との出会い

「私が工事した誰かの家」

私の建築設計との出会いを思い返すと、幼少期にさかのぼります。

実家が電気工事業を営んでいたので、普段から父親の作業場が私の幼い頃の遊び場でした。そこには図面や工具、何に使うかわからないような小さな部品が所狭ましと並んでいました。

私は幼い頃、工作が大好きで学校から帰ってくると、夕飯の時間になるまでその作業場で設計図らしき絵を描たり、ノコギリやトンカチを使ってテーブルや椅子、模型などモノづくりに没頭していました。時にはイメージ通りに出来ない事もありましたが、自分のアイデアを形にするその過程にとてもワクワクしたのを覚えています。

幼少期に描いた設計図

そんな幼少時代を過ごし中学生になったある日、父親の現場に行く機会がありました。そこは住宅の建設現場だったのですが父親から「手伝え」と、コンセントとスイッチを付けるよう指示されました。

趣味の工作のおかげで中学生にして工具の使い方をマスターしていた私は、見様見真似で何とか数個所取り付けることが出来ました。リビングの照明がパッと点灯した瞬間、今まで経験したことのない感動や達成感を感じたのを覚えています。

その何ヶ月後、夕暮れ時にその住宅の前を通る機会がありました。「あの住宅のスイッチは僕が付けたんだ~」と車中から眺めていると、そこにはしっかりと人がいてリビングには明るい照明が灯っていました。私はその時初めて人の役に立ったような気がしてとても嬉しかったですし、将来必ず電気工事士になる!(建築士ではなく…)と決意した瞬間だったと思います。

今思えば、有名建築家の作品や名建築でもない「私が工事した誰かの家」が私の建築との出会いであり、建築が設計者はもちろん様々な専門技術を持つ職人が一つになって造られるのだとその時に分かったような気がします。

その後も定期的に現場に連れて行ってもらい様々な建築に触れる中で、デザインや間取りについて興味や疑問が湧くようになりました。一度は電気工事士になると決意し、高校の電気科に入学して電気工事士の免許も取得したものの、好奇心旺盛な私は「自分で建物を設計してみたい」という気持ちを抑えきれなくなり、建築士を目指し専門学校へ入学しました。

建築設計を学ぶにつれ、数々な名建築に触れる機会がありました。教科書や雑誌に掲載されている建物に興味が湧けば、ドライブが好きな私は「道がつながっている限りどこまででも行ける」と自分に言い聞かせ、建築を求めて遠方に足を延ばすことも多々ありました。

その中で印象深いのは前川國男設計の林原美術館です。小さな美術館ですが、一通り展示を見た後に現れる談話休憩コーナーは素晴らしく心地良いのです。美しいデザインと機能性、シンプルで計算された空間構成は建築が単なる物体ではなく人々の感情や行動に大きく影響することを身を持って体験することが出来ました。

学生時代に染み付いた習慣は、設計を仕事にした今も続いています。家族での旅行先で観光地に行く道中、地方銀行の本店を見学するために寄り道を…そのため妻と子供たちからは白い目で見られることもしばしば…(苦笑)。でもそれは私がちょうどその時期に、銀行の設計をしていたからなのですが(言い訳)。

今では大きな建物や公共建築を設計させていただく機会があり、建築は人々の生活や社会に与える影響が非常に大きいと感じています。

一方で、日々設計の仕事に集中していると合理性や機能ばかりを追求しすぎるあまり、楽しさや心地よさが失われていることに気付くことがあります。そんな時「私が工事した誰かの家」を思い出し、「そこには必ず人がいる」という事実を思い起こさせてくれるのです。

三井峰志

PROFILE

株式会社鈴木一級建築士事務所

富山市長柄町二丁目1番21号
http://suzuki-ken.jp

三井峰志

1986年 富山県宇奈月町生まれ
2007年 富山建築・デザイン専門学校建築学科卒業
2007年~株式会社鈴木一級建築士事務所

資格:一級建築士
所属団体:公益社団法人JIA日本建築家協会 
公益社団法人建築士会
一般社団法人JCD日本商環境デザイン協会
TKN富山建設業ネットワーク

【主な設計担当】
富山県消防学校・四季防災館
富山県立中部高校
さみどり幼稚園・認定こども園
ホンダカーズ富山赤江店、新庄本町店
石動信用金庫本店